慢性術後痛になりやすい人とその原因

慢性術後痛にはどうしてなるの?原因は?

じつは、慢性術後痛がおこる原因やメカニズムははっきり分かっていません。慢性術後痛の発症は、患者さんの要因(心理的な因子、遺伝などの体質、もともと別の場所に慢性的な痛みがある状態など)、手術の種類、麻酔や術後の鎮痛方法などが複雑に影響しあって起こるといわれています。 手術後数日(急性期)の痛みが強くてなかなかおさまらない場合は痛みが慢性化しやすいといわれています。1)

手術によって体の組織が損傷すると、けがをした時と同じように組織に炎症がおきて発痛物質がつくられます。それが痛みの信号となって末梢神経、脊髄、脳へとつながった神経経路に伝わって痛みを感じます。
通常は組織の損傷が時間とともに修復されて傷がきれいになり、痛みの信号が消えて痛みを感じなくなりますが、何らかの理由で痛みを伝える経路のどこかで痛みの信号が異常に増幅されてしまったり、脳が痛みを感じ取りやすい状態になってしまったりすると痛みが持続、慢性化するのではないかといわれています。2)
このメカニズムは複雑でいろいろな要素が重なって起こっていると考えられています。

慢性術後痛になりやすい人はいるの?

これまでの研究で、慢性術後痛を発症しやすい人や条件(危険因子)がいくつか報告されていますが、いまのところ慢性術後痛の発症を確実に予測できるものはありません。

慢性術後痛発症の危険因子

手術前の因子手術中の因子手術後の因子
術前からの慢性痛神経損傷の可能性強い急性痛
併存疾患大手術神経障害性の化学療法
反復手術感染・出血・合併症放射線療法
心理的負担麻酔方法うつ
不安手術部位不安
若年者不十分な術後ケア(と感じること)
女性組織の癒着
労災関係
遺伝
その他 特殊な状況
病的肥満
麻薬性鎮痛薬の乱用
医療用麻薬の処方

参考文献

  1. Rosenberger DC, et al. BJA education 22 (2022): 190-6
  2. Kehlet H, et al. Lancet 367(2006): 1618-25